ビジネス要件のITIL V3とは?5つのフレームワークとV4との違いを紹介
ITIL V3の概要
ITILとは、ITサービスマネジメント(ITSM)を提供する際の成功事例(ベストプラクティス)を体系化したガイドラインです。
ITILは1980年代に登場し、それ以来ITSMを提供するためのフレームワークとして活用されています。
ITIL V3はITILベストプラクティスフレームワークの第3版となっており、2007年にリリースされました。
ITIL V3の構成5つ
ITIL V3には5つの構成要素があります。
ITIL V3にはサービスサイクルと呼ばれる、「サービスストラテジ」「サービスオペレーション」「サービスデザイン」「継続的サービス改善」「サービストランジション」という5つのプロセスによって構成されています。
ここではITIL V3の構成5つをご紹介しますので、それぞれどのようなプロセスになっているのか参考にしてみてください。
1:サービスストラテジ
ITIL V3の「サービスストラテジ(サービス戦略)」とは、全体方針の確認と戦略の策定を行うものです。
ITサービスマネジメントを提供する際に、ビジネスの目的などを明確にし、具体的にどのような領域でどのようなサービスを実現するのかなどを検討します。
検討事項には、財務管理や需要管理、事業関係管理、サービスポートフォリオ管理などが含まれます。
2:サービスオペレーション
ITIL V3の「サービスオペレーション(サービスの運用)」とは、運営管理を行うものです。
後述するサービスデザインによって顧客と合意しているレベルで、顧客に対してITサービスを提供する運営方法をまとめたものがサービスオペレーションです。顧客にコストやリスクなどを負わせずに価値を提供します。
検討事項としては、イベント管理やインシデント管理、問題管理、要求実現、アプリケーション管理などが含まれます。
3:サービスデザイン
ITIL V3の「サービスデザイン(サービスの設計)」とは、業務設計を行うものです。
サービスストラテジによって決定した新しいITサービスを、設計手法にもとづいて安全に導入するための設計をします。また、サービスの品質や予算などのレベルについて、顧客と同意します。
検討事項としては、サービスカタログ管理やキャパシティ管理、ITサービス継続性管理、可用性管理などが含まれます。
4:継続的サービス改善
ITIL V3の「継続的サービス改善」とは、測定、報告、改善を行うものです。
顧客やユーザーに魅力的なITサービスを将来にわたって提供し続けるため、測定や分析、報告などを行うことで、ITサービスやプロセスの継続的な改善方法をまとめたものです。また、継続的サービス改善は他のすべてのプロセスでも実施されることが望ましいでしょう。
5:サービストランジション
ITIL V3の「サービストランジション(サービスの移行)」とは、運営準備を行うものです。
顧客やステークホルダーの要件にもとづき、設計したITサービスを運用するための手法をまとめたものがサービストランジションです。
検討事項には、移行の計画立案とサポート、サービス資産と構成管理、変更管理、リリースと展開管理、サービスの妥当性確認とテストなどが含まれます。
ITIL V3とITIL4の違い
ITIL4はこれまでのITILと基本概念が大きく変わっているため、ITIL V3とITIL4にはさまざまな点で違いがあります。
ITIL V3までのITILはIT技術者が利用者に提供するITサービスを対象としていましたが、ITIL4では組織が消費者へ提供するIT対応サービスを対象としています。具体的な違いは以下になります。
ITIL V3 | ITIL4 | |
---|---|---|
書籍の数 | 5冊 | 6冊 |
書籍の構成 | ライフサイクル | モジュール |
価値提供方法 | ITがビジネスに価値を提供 | ITとビジネスによる価値の共創 |
改善方法 | プロセスアプローチ | バリューストリーム |
活動の定義 | 26のプロセスと4つの機能 | 34のプラクティス |
ITIL V3とITIL4ではどちらを受験すべき?
何を目的としてITILを学ぶのかをよく検討し、どちらを受験するのか決めましょう。
ITサービスの現場で使用されている共通用語としてITILを学びたい場合、ITIL V3を学ぶのがおすすめです。
一方、クオリティの高いITサービスを提供するためのノウハウとしてITILを学びたい場合、ITIL4を選ぶとよいでしょう。
ITIL V3認定レベル5つ
ITIL V3認定における5つのレベルをご紹介します。
ITIL V3認定試験には「ファンデーションレベル」「プラクティショナーレベル」「インターメディエイトレベル」「エキスパートレベル」「マスターレベル」という5つのレベルが存在します。
ここではITIL V3認定レベル5つを紹介していきます。
1:ITIL V3マスターレベル
「ITIL V3マスターレベル」とは、エキスパートレベルの知識を習得しており、かつITIL V3を応用した実務経験があることを認定するものです。
ITIL V3認定での最上位の資格となっています。ITIL V3マスターレベルの認定を取得する場合、実際にITサービスを提供する際にITIL V3を実装し、達成した成果を文書として提出する必要があります。
2:ITIL V3エキスパートレベル
「ITIL V3エキスパートレベル」とは、ITIL V3のベストプラクティスのスキルを保有し、さらにITIL V3でのプロセス全体に対する深い知識を持っていることを認定するものです。
ITIL V3エキスパートレベルはITIL V3認定での上級者向けの資格です。エキスパートレベルを取得した場合、中級者向けであるインターメディエイトレベルのモジュールのクレジットを習得し、モジュールを網羅的にカバーできる人材であることを証明できます。
3:ITIL V3インターメディエイトレベル
「ITIL V3インターメディエイトレベル」とは、ITIL V3のベストプラクティス、プロセス、役割について、各モジュールを習得していることを認定するものです。
ITIL V3インターメディエイトレベルは、ITサービス管理に重点を置いたモジュールレベルです。 ITIL V3認定の中では中級者向けのレベルだと言えます。
4:ITIL V3プラクティショナーレベル
「ITIL V3プラクティショナーレベル」とは、ITIL V3を採用し、維持するためのスキルを認定するものです。
ITIL V3プラクティショナーレベルはITIL V3認定レベルの第2段階で、ITサービスを提供するスタッフが実際にITILフレームワークを採用できるようにすることを目的としています。
主にファンデーションレベルと第3段階のインターメディエイトレベルとの橋渡しするレベルです。
5:ITIL V3ファンデーションレベル
「ITIL V3ファンデーションレベル」とは、ITILの用語や構造、概念などの基本的な知識を身につけていることを認定するものです。
ITIL V3ファンデーションレベルはITIL V3認定レベルの第1段階で、ITILコンセプトに関する基本知識などについて問う初心者レベルの認定です。
試験を受けるための要件などはなく、誰でも受験可能です。
ITIL V3ファンデーションレベル試験の内容
ITIL V3ファンデーションレベル試験はITILの重要な要素に関する認識やコンセプトの基本、ITILサービスライフサイクルの定義などが出題されます。
また、出題形式は40問の選択問題となっており、試験では持ち込みは禁止となっています。合格することで、プラクティショナーレベルを受験できるようになります。
ITIL V3ファンデーションレベルの受験資格
ITIL V3ファンデーションレベルに受験資格はありません。
ITIL V3ファンデーションレベルの試験を受験するための前提条件などはないため、ITサービスマネジメントについて学びたい人であれば、誰でもITIL V3認定試験に挑戦することができます。
ITIL V3かITIL4を学習するかは目的に合わせて選ぼう
ITIL V3はITサービスを提供する際に使用するITサービスマネジメントの成功事例やプロセスで構成されたフレームワークです。
ぜひITIL V3の概要や構成、ITIL V3とITIL4の違いや5つのITIL V3認定レベルなどを参考に、ITサービスの提供に役立つITIL V3について理解を深めてみてはいかがでしょうか。
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