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Slerの将来性とは?ビジネスモデルが崩壊する危険性がある理由4つ
- SE
- 「Slerは将来性がない!」といわれているのは本当でしょうか?
- PM
- コストや人員削減の流れにより、ビジネスモデルが崩壊する危険性があるといわれています。
目次
SIerとは
まず、SIという聞きなれない言葉について説明します。SIはSystems Integrator、つまりシステムインテグレーターの略称です。システムインテグレーターは企業の情報システムの構築を請け負うITサービス事業者を指す言葉で、IT戦略の立案から設計、開発、運用・保守・管理までを一括請負する情報通信企業のことです。そのSIに行為者の意味を持つ「er」をつけてSIer(エスアイヤー)という和製英語が生まれました。まとめると、SIerはITを使って設計、開発、運用・保守・管理までを一括請負する情報サービス企業という意味です。
SIerの種類
SIerは主にメーカー系・ユーザー系・独立系の3種類に分けられています。メーカー系は、元々ハードウェアを製造していた企業がSIerとなったもので、具体的にはNECや富士通といった会社が当てはまります。ユーザー系は情報システム部門が分社化して親会社以外の仕事を積極的に請け負うようになった会社で、具体的には中部電力やJRといった会社が当てはまります。独立系は純粋にシステムインテグレーション事業を行うためにできた会社で、具体的にはNTTデータや大塚商会といった会社が当てはまります。
SEやSESとの違い
SEはシステムエンジニアのことで、主にシステムの設計・開発・運用などにかかわる人間のことです。会社ではなく人を指すという点がポイントです。SESはSystem Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略称で、クライアントに技術者を派遣することです。SIerは会社、SEは人、SESはサービスと全く違う意味の言葉です。SIerに働いている人がシステムエンジニア、そしてSEを派遣するのがSESとなります。
SIerのビジネスモデルの将来性は?
さて、SIerについてざっくりと説明をしたところで本題に入りましょう。まず、将来性についてです。その将来性は危ぶまれています。SIerのビジネスの現状は問題点も多く、主に4つの要因があります。
Slerの仕事内容4つ
SIerの仕事を4項目に分けて説明します。その4項目は、要件定義、提案、設計・開発、運用です。それぞれの会社が協力し合い、この4項目を責任もってこなしていきますが、この仕事過程と構造にこそ将来性の危険が潜んでいるのです。では、1項目ずつ詳しく解説していきます。
Slerの仕事内容1:要件定義
まず取り掛かるのは要件定義です。要件定義は、ユーザーがどのようなシステムを求めているのかを聞いて構想を練ることです。必要な機能や性能を聞き取り、システムをどうやって作るのかという過程を決める重要な処理のため、手慣れているSEが担当します。大まかな要望を現実的なシステムにするためにユーザーとSEが互いに話し合い、お互いが納得するとようやく次のステップに進むことができます。
Slerの仕事内容2:提案
提案は、要件定義の中で行われることが多いです。その役割は、実際にシステムを現実化するためのアイデアを出し合うことです。要件定義との違いは、本当に実現性があるのかどうかを真剣に問い詰めていくところです。要件定義ではどんなシステムを作りたいのかを話し合いますが、提案では実現するためのコスト・時間割などを話し合います。本当にこのような仕様が作れるのか、スケジュールや予算は十分にあるのか、もっと作りやすい方法はないのか、計画にあいまいな部分が出ないようにしっかりと決めていきます。
Slerの仕事内容3:設計・開発
システムの仕様・スケジュールなど計画が決まればいよいよ設計と開発です。要件定義書を元に、仕様に必要なシステムを設計していき、設計書通りにプログラムを書いていきます。これは、私たちが想像するエンジニアのような仕事ですね。この段階で実際にシステムは完成します。しかし、設計して開発するだけではこのステップは終わりません。ちゃんとユーザーの求める仕様通りに動くかどうか確かめなくてはいけません。プログラムがしっかり動くかどうかのテスト、所謂バグ探しを行います。それぞれのテストに対して専門の会社が存在するほど大切な過程です。
Slerの仕事内容4:運用
テストで問題が一切見つからなくなったら、最後のステップである運用を行います。運用はユーザーがシステムを利用している間、仕様通りに動いているか監視することです。もし、エラーが生じた場合には早急に対応を行います。例えテストで問題が起きなかったとしても、システムをユーザーに渡した後に予期しない不具合が起こることがあります。エラーを修正するのは保守とも呼ばれ、作業は開発に近いことを行います。
Slerのビジネスモデルが崩壊する危険性がある要因4つ
ここまでの説明でSIerの仕事内容が理解できたと思います。ユーザーとの話し合い・システムの作成と確認・使用されているシステムの見張り、この一連の流れの中に実はSIerの将来性に対する危険が含まれていたのです。では、4つの要因がなぜ将来性に不安を与えるのかを1つずつ解説していきます。
要因1:ITのサービス化の流れ
現在かなりIT化が進んでいるといわれていますが、その影響をSIerは強く受けてしまっています。前途に記述した通りSIerはシステム作成を行う会社ですが、ここ最近ではシステムのクラウド化が進んでしまっているのです。ITサービスをクラウド上で提供する会社が増え、システムを作るという需要が減少傾向にあります。システムを一から作るには、長い時間と費用がかかりますが、元からあるシステムを利用すれば格段にコストが安くなります。その結果、SIerの需要が減ってしまい、会社の将来性が危ぶまれています。
要因2:多重下請け構造である
まず、先ほどの長い仕事過程を見ればわかる通り、一つの会社ですべてをやりきることはとてもできません。そこで、それぞれの専門会社が協力し合ってシステムを作る、多重下請け構造ができます。このまま多重下請け構造が続けば、SIerの将来性に期待ができなくなってしまいます。多重下請けはどの過程を担うかで儲けに差が出てしまったり、人員が余ってしまったりという問題が出てきます。システム作りはどの過程も大変な作業を強いられるのに対し、儲けに差が生まれてしまうのです。また、一つシステムを作るのに大量の人を雇ったとしても、システムが作り終わった後は用済みになってしまいます。アメリカではその都度雇って解雇をするようですが、日本ではまだ終身雇用の習慣が根強いため、解雇するのは難しくなります。このような状況が続けば、SIer業界から人がいなくなっていき、将来性のない仕事となってしまうでしょう。
要因3:労働人口の減少
日本では少子高齢化による労働者の減少が問題となっていますが、SIerではさらに労働人口の減少に拍車をかけて将来性を無くしている要素があります。それは先ほど紹介した多重下請け構造です。企画や設計などを担当する会社は地味な作業が多いのに対して儲けが少なく、若者がSIer業界から遠ざかって行ってしまいます。地味な作業でまずまずの給料が安定してもらえるならまだしも、少ない給料でプログラミングもせずに地味な作業を強いられることも少なくありません。このような労働環境では、若い人ほど転職をして会社を辞めてしまい、会社の将来性に多大な影響を与えます。さらに、若いころから働いている人が減ってしまうと、SIerの将来性に陰りが見えてきます。
要因4:Web系にシフトしたSlerに変わる可能性
これまで、SIerは情報システムをユーザーの要望に合わせて作成して提供してきました。しかし、近年ではWebやスマートフォンの普及により需要が変わってきました。そのため、SIerも需要に合わせて会社の方針を変えていかなければなりません。SIerは需要の多いWebやスマートフォンのアプリのようなシステム開発を行うように変化しています。変化が大きくなれば、その分ついていけなくなってしまう人が出て労働人口が減ってしまう可能性があります。つまり、将来性のある事業とは言えなくなってしまうのです。
SIerの将来性を考えたうえで取るべき行動3つ
これまで紹介した4つの要因を回避して将来性を回復する手段はないのでしょうか。将来性に不安はありますが、SIer自体がなくなる可能性はそこまで高いわけではないでしょう。ただ、今のままではSIerは縮小していくかもしれません。時代の流れについていけなかった会社の倒産や顧客の減少による給料の減少が起きる危険性もあります。これから紹介する3つの行動を参考にして、出来るだけ不安を無くしましょう。
取るべき行動1:外部環境を認識する
自分にとって理想の仕事環境を整えるためには、戦略を立てることをお勧めします。その戦略を立てるには外部環境をしっかりと把握する必要があります。今置かれている環境をしっかりと把握することで、求めている仕事環境を実現するための手順を組み立てることができるということです。自分の持っているビジョンに対して、それを実現できるような会社は周りにあるのか、今務めている会社よりも将来性がある会社は存在するかどうかを見極めていく必要があるのです。
取るべき行動2:必要な能力を身に付ける
先述したように、SIerに大きな変化が起きるかもしれません。また、ユーザーの要望に対応するために、新たな知識や技術の獲得が必要になります。つまり、新しい能力を率先して身に着けることができる人が求められているわけです。自らの価値を高め、企業に必要な人材に近づくことも大切です。様々なスキルを持つことで、今よりもより良い、将来性の望める会社に転職するチャンスもやってくるかもしれません。
取るべき行動3:1つの会社に長居しない
日本はひとつの会社にとどまる人が多いのですが、様々な会社を経験することもおすすめします。様々な会社を経験することで、新たな知識や経験の獲得する機会が生まれやすくなります。多くの会社で経験を積み、幅広い知識を持っていれば転職を優位に進めやすくなります。転職しやすいということはより良い条件の会社に就職しやすいということです。
- SE
- SIer自体がなくなってしまうわけではないのですね。
- PM
- そうですね。しかし、いざというときのためにスキルアップや働き方を見直す必要があるかもしれませんね。
SIerの将来性を認識しよう
いかがだったでしょうか。SIerのついて危険性や将来性、それから取るべき行動も含めて紹介してきました。これからSIerは大きく変化していくでしょう。この変化についていけるか将来性を見極め、多くの能力を身に着け、様々な経験を積むことが大切になります。今回の記事を参考に、SIerに勤めている人は現状をしっかり把握しましょう。